親の退院後、最初に準備すること。

入院していた親の退院が決まった。

本来なら、喜ばしいことです。

一方で、ご家族からは、

「退院後、家で本当に生活できるのだろうか」

「食事やトイレは一人で大丈夫?」

「介護サービスは、退院してから探せばいい?」

「急に具合が悪くなったら、どこへ連絡すればいい?」

という不安もよく聞きます。

病院では、看護師や介護職員が近くにいます。

しかし、自宅へ戻れば、生活の中心は本人と家族です。

退院は治療の終わりではなく、自宅での生活を再スタートする日でもあります。

親の退院後に最初に準備するべきことは、介護用品を買いそろえることだけではありません。

まず必要なのは、

自宅でどのような支援が必要になるのかを退院前に整理し、誰へ相談するかを決めておくこと

です。

この記事では、親の退院後に家族が最初に準備することを、尼崎市武庫之荘の「ヘルパーステーションひまわりの約束」が、時系列に沿って分かりやすく解説します。

目次

退院後の準備は「退院してから」では遅いことがある

退院後の生活準備は、できるだけ入院中から始めます。

尼崎市では、高齢者が退院後も切れ目なく医療・介護サービスを利用できるよう、市内の病院、地域包括支援センター、ケアマネジャー、訪問看護ステーションなどが連携する入退院調整の仕組みを整えています。

入院前と比べて、

  • 歩けなくなった
  • 車いすが必要になった
  • 排せつ介助が必要になった
  • 認知機能が低下した
  • 薬が増えた
  • 食事形態が変わった

という場合、以前と同じ生活環境のままでは対応できない可能性があります。

退院日が決まってから慌てるのではなく、退院前から病院の看護師、退院支援担当者、医療ソーシャルワーカーへ相談してください。

医療ソーシャルワーカーは、患者本人や家族が抱える生活上・経済上・心理上の問題について相談を受け、入退院や地域生活への移行を支援する専門職です。

まず確認するのは「退院後、一人でできないこと」

退院後の支援を考えるときは、病名だけではなく、生活動作を一つずつ確認します。

自宅内の移動

  • ベッドから一人で起き上がれるか
  • 椅子から立ち上がれるか
  • 杖や歩行器で安全に歩けるか
  • 車いすへの移乗が必要か
  • 玄関や室内に段差がないか

排せつ

  • 一人でトイレへ行けるか
  • ズボンの上げ下げができるか
  • 夜間もトイレへ移動できるか
  • ポータブルトイレやおむつが必要か

食事

  • 自分で調理できるか
  • 買い物へ行けるか
  • 普通の食事を安全に飲み込めるか
  • 食事介助や見守りが必要か
  • 水分を十分に取れるか

清潔保持

  • 一人で入浴できるか
  • 浴槽をまたげるか
  • 身体や髪を洗えるか
  • 入浴が難しい場合、清拭などが必要か

薬の管理

  • 薬の種類と服用時間を理解しているか
  • 飲み忘れや重複がないか
  • 家族が薬を準備できるか
  • 訪問看護や薬剤師への相談が必要か

「歩ける」「食べられる」といった大まかな確認だけではなく、実際に自宅で一人になったときに安全に行えるかを考えることが大切です。

退院前に確認したい7つのこと

尼崎市の在宅療養ハンドブックでは、退院前のカンファレンスなどで、症状の管理、薬、介護サービス、福祉用具、住宅改修などについて、医療・介護の専門職が情報を共有することが案内されています。

家族は、次の7項目を確認しておきましょう。

1.今後の治療と通院予定

最初に確認するのは、退院後の医療です。

  • 次の診察日はいつか
  • どこの病院・診療科を受診するか
  • 通院できない場合はどうするか
  • 傷の処置や医療的な管理が必要か
  • 訪問診療や訪問看護が必要か
  • どのような症状が出たら病院へ連絡するか

緊急時の判断については、自己判断だけに頼らず、退院時に病院から受けた説明と指示を確認してください。

連絡先は、家族全員が分かる場所へ保管します。

2.薬の内容と管理方法

退院時に薬の種類や量が変わることがあります。

入院前から持っていた薬と、退院時に処方された薬を一緒に保管すると、重複や飲み間違いにつながる可能性があります。

退院時には、

  • 薬の名前
  • 服用する時間
  • 服用期間
  • 中止になった薬
  • 飲み忘れた場合の対応
  • 薬を管理する人

を確認しましょう。

高齢者は複数の医療機関から薬を処方されている場合もあるため、かかりつけ医や薬剤師へ服薬情報を共有することも重要です。厚生労働省も、在宅療養へ移る際には薬による有害事象の有無などを確認する必要性を示しています。

3.自宅の環境と福祉用具

病院のベッドやトイレでは動けていても、自宅では事情が違います。

例えば、

  • ベッドが低くて立ち上がれない
  • 廊下に手すりがない
  • トイレまでの距離が長い
  • 浴室に大きな段差がある
  • 玄関で車いすを使えない
  • 夜間の照明が暗い

という問題があります。

必要に応じて、

  • 介護ベッド
  • 手すり
  • 歩行器
  • 車いす
  • シャワーチェア
  • ポータブルトイレ
  • スロープ
  • 床ずれ防止用具

などを検討します。

福祉用具や住宅改修には介護保険を利用できる場合がありますが、購入・工事を先に行うと対象にならないこともあるため、ケアマネジャーや地域包括支援センターへ事前に相談してください。

4.家族だけで対応できる時間と内容

家族が一緒に住んでいても、すべての介護を担当できるとは限りません。

  • 日中は仕事で不在
  • 夜間の介助が難しい
  • 入浴介助は身体的に危険
  • 遠方に住んでいる
  • 介護する家族も高齢
  • 子育てと介護が重なっている

ということもあります。

退院前には、家族が「頑張ればできること」ではなく、無理なく継続できることを確認してください。

最初から家族だけで抱え込む計画を立てると、本人と家族の両方が疲弊する可能性があります。

家族ができない部分を、訪問介護、訪問看護、デイサービス、福祉用具、配食サービスなどで補うことを考えます。

5.介護保険とケアマネジャー

すでに要介護認定を受けており、担当ケアマネジャーがいる場合は、退院日が決まった時点で連絡してください。

入院前に利用していたサービスが、退院後も同じ内容でよいとは限りません。

身体状態が変化している場合は、ケアプランや訪問介護計画の見直しが必要です。

尼崎市の入退院調整ルールでも、必要に応じて病院とケアマネジャーなどが情報共有し、多職種による退院前カンファレンスを行う流れが示されています。

まだ要介護認定を受けていない場合は、入院中から申請を検討します。

尼崎市では、要介護認定を申請し、認定調査や主治医意見書、審査を経て要介護度が決まり、その後にケアプランを作成して介護サービスを利用する流れとなっています。

申請は本人や家族のほか、地域包括支援センターや指定居宅介護支援事業所などへ代行を相談できます。

6.退院当日から必要な介護サービス

退院後に訪問介護を利用する場合、退院してから事業所を探し始めるのではなく、できるだけ事前に調整します。

例えば、

  • 帰宅直後のベッドへの移乗
  • 夕食の準備
  • 排せつ介助
  • 着替え
  • 就寝介助
  • 翌朝の起床介助
  • 服薬の声かけ
  • 入浴または清拭

が必要になることがあります。

希望する曜日・時間に必ずヘルパーが見つかるとは限りません。

特に早朝、夜間、土日祝日、複数名での介助が必要な場合は、早めの調整が必要です。

訪問介護だけでなく、医療的な処置や健康観察が必要な場合は、訪問看護との連携も検討します。

尼崎市では、病院、ケアマネジャー、地域包括支援センター、訪問看護などが連携し、退院後の支援を途切れさせないための取組を行っています。

7.緊急時の連絡方法

退院後は、体調の変化や転倒など、予想していなかったことが起こる場合があります。

次の連絡先を紙とスマートフォンの両方にまとめておくと安心です。

  • 主治医・かかりつけ医
  • 退院した病院
  • 訪問看護ステーション
  • ケアマネジャー
  • 訪問介護事業所
  • 家族・親族
  • 緊急時に駆けつけられる人

一人暮らしなど一定の条件に該当する場合、尼崎市には急病やけがなどの不測の事態に24時間対応する「あんしん通報システム」もあります。利用条件があるため、地域包括支援センターなどへ確認してください。

退院当日に家族が確認すること

退院当日は、荷物を運んで終わりではありません。

自宅に戻ったら、実際の生活動作を確認します。

  • 玄関から室内へ安全に入れるか
  • ベッドまで移動できるか
  • ベッドから立ち上がれるか
  • トイレへ間に合うか
  • 薬をどこへ置くか
  • 食事と水分を取れるか
  • 夜間に一人で動いて危険がないか
  • 緊急連絡先が分かるか

病院では「歩行可能」と言われていても、自宅の段差や家具の配置によっては危険なことがあります。

退院当日は、できる限り本人を長時間一人にせず、自宅での動きを確認することをおすすめします。

問題が見つかった場合は、無理に家族だけで解決しようとせず、ケアマネジャーや医療・介護の担当者へ早めに共有してください。

退院後1週間は「できると思っていたこと」を見直す期間

退院前に準備していても、実際に生活を始めると新しい問題が見つかります。

例えば、

  • 夜になると一人でトイレへ行けない
  • 薬の管理が難しい
  • 食事をほとんど食べない
  • 入浴を怖がる
  • 家族が想像以上に疲れている
  • 通院手段が確保できない
  • 一人になると不安が強くなる

ということがあります。

最初に決めた支援内容へ無理に合わせる必要はありません。

本人の状態や家族の負担が想定と違った場合は、ケアマネジャーなどへ相談し、サービス内容や回数、福祉用具を見直します。

退院直後は、本人も家族も新しい生活に慣れていません。

できなかったことを責めるのではなく、

どの支援があれば安全に続けられるか

を考える期間にしてください。

退院前カンファレンスで家族が質問すること

退院前カンファレンスや病院からの説明では、次の質問をしておくと安心です。

病気・医療について

  • 自宅で注意する症状は何ですか
  • どのような状態なら病院へ連絡しますか
  • 次の診察はいつですか
  • 訪問診療や訪問看護は必要ですか

生活について

  • 一人で歩けますか
  • トイレや入浴に介助は必要ですか
  • 食事形態や水分に注意点はありますか
  • 夜間に見守りは必要ですか

介護について

  • 退院当日から必要な支援は何ですか
  • 福祉用具は必要ですか
  • 介護保険の申請や変更は必要ですか
  • 誰がケアマネジャーへ連絡しますか

「分からないことが分からない」という状態でも問題ありません。

病院側に、

自宅で生活するうえで、家族が準備することを一つずつ教えてください

と伝えてください。

よくある質問

退院後に訪問介護をすぐ利用できますか?

要介護認定やケアプラン、訪問介護事業所との契約・調整が済んでいれば、退院日やその直後から利用できる場合があります。

ただし、認定状況、事業所の空き、必要な支援内容によって異なります。

退院日が決まったら、できるだけ早く病院の退院支援担当者やケアマネジャーへ相談してください。

要介護認定を受けていなくても相談できますか?

はい。

要介護認定前でも、地域包括支援センターや訪問介護事業所などへ相談できます。

尼崎市の地域包括支援センターは、市内12か所に設置され、本人や家族からの相談に無料で対応しています。2026年4月以降の開所時間は、原則として月曜日から土曜日の午前9時から午後5時です。

退院前に自宅を見てもらうことはできますか?

ケアマネジャー、福祉用具専門相談員、リハビリ職などが、必要に応じて自宅環境を確認することがあります。

実施できるかどうかは、病院や事業所の体制、本人の状況によって異なるため、退院支援担当者へ相談してください。

家族が同居していれば訪問介護は必要ありませんか?

同居家族がいるだけで、訪問介護が不要になるわけではありません。

本人の身体状態、家族が行える介護、家族の仕事・健康状態などを確認し、必要性を判断します。

入浴や移乗など、家族だけで行うと危険な介助もあります。

退院後に家族だけで対応できないと分かったらどうすればいいですか?

ケアマネジャー、地域包括支援センター、訪問看護、訪問介護事業所などへ早めに相談してください。

ケアプランやサービス内容を見直し、訪問回数、デイサービス、福祉用具、自費サービスなどを検討します。

私たちが大切にしていること

退院できると聞くと、

「これで元の生活に戻れる」

と思うかもしれません。

しかし、入院前と同じ身体状態で戻れるとは限りません。

本人も、

以前は自分でできていた。

家族に迷惑をかけたくない。

まだ介護は必要ない。

そのように思うことがあります。

家族も、

できる限り自分たちで支えたい。

何とかなるだろう。

と思うことがあります。

その気持ちは、とても大切です。

ただ、無理をして事故が起きたり、家族が倒れたりしてしまっては、在宅生活を続けることが難しくなります。

すべてを家族が背負う必要はありません。

できることは本人に続けてもらう。

家族が無理なくできる部分は支える。

専門的な介助や、継続が難しい部分は、医療・介護サービスを利用する。

その役割分担を考えることが大切です。

これだけ色々な介護、福祉、医療のサービスがあるにも関わらず、

今でも家族だけで介護してしまい、仕事を辞めてしまったり、

親の介護に疲れて鬱になってしまったり、

親子喧嘩をしてしまい、絶縁状態になってしまう方がたくさんいます。

さらには誰の手も借りずになんとか生活している高齢者の方がおられます。

自宅に誰かが入ることに抵抗があるのもわかります。

介護保険はできることの範囲が狭いので窮屈なのもわかります。

ただ、

家族だけで介護することはぜひ避けて欲しいです。

できる限り支援する人を増やして対応するのがいいと思っています。

尼崎市で親の退院後の生活にお困りの方へ

ヘルパーステーションひまわりの約束は、尼崎市武庫之荘を拠点に、訪問介護・居宅介護・重度訪問介護・同行援護・移動支援・介護保険外の自費サービスを提供しています。

「退院日が決まったが、何を準備すればよいか分からない」

「親を一人にしてよいか不安」

「入浴やトイレの介助を家族だけでできない」

「要介護認定やケアマネジャーのことが分からない」

「退院直後からヘルパーを利用したい」

そのような段階でもご相談ください。

今、何に困っているのか。

退院後、どの時間帯に支援が必要なのか。

介護保険で何ができるのか。

自費サービスを含めて、ほかにどのような方法があるのか。

一つずつ整理します。

退院後の生活は、家族だけで準備するものではありません。

病院、医師、看護師、医療ソーシャルワーカー、ケアマネジャー、訪問看護、訪問介護など、地域の専門職と一緒に支えることができます。

親が住み慣れた自宅で、少しでも安心して生活を再開できるように。

早めの準備と相談から始めましょう。


執筆者情報

執筆者:夏梅 勇太

株式会社ケアエンリッチメント代表取締役
ヘルパーステーションひまわりの約束 管理者
介護福祉士

兵庫県尼崎市で訪問介護・障がい福祉サービス事業を運営。訪問介護の現場、事業所運営、人材採用・育成に携わっています。

最終確認日:2026年8月6日

※必要な退院支援や介護サービスは、本人の病状、身体状態、要介護認定、家族状況、医療機関や事業所の体制によって異なります。実際の準備については、入院中の医療機関、担当ケアマネジャー、地域包括支援センターなどへご相談ください。

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